チェリーをあげる。

渡さんのお姉さんが運転する車に乗って、町の中に入る。


夏祭りの最中だけあって、窓の外を覗くと、至る所に大きな提灯が連なっているのが見えた。




「ホントにお祭りなんですね」




助手席の礼さんに声をかけると、


彼女はこっちを向いて「そうなの。渡も帰って来ればいいのにね」と笑った。




「渡のヤツバイトが忙しいからって、この夏休みはお盆に2、3日しか帰って来ないんだって」




運転席から渡さんのお姉さんが言った。




「そうみたいですね…。渡さん、夏休みの間バイト増やしたって言ってましたから…」




私の言葉に、再び礼さんが後ろを向いて眉を下げた。




「ま…、あの子もちゃんとした理由があって、バイトに力入れてるんだけどね」


「…そうなんですか」


「うん」




礼さんは前を向き直った。




礼さんは私の知らない渡さんのこと、よく知ってるんだな…。




そりゃそうだよね。



礼さんは渡さんとエッチするような関係だったんだからさ。


私が知らない渡さんを知ってて当然だよね。




わかっちゃいるけど、やっぱり礼さんに嫉妬してまう。
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