チェリーをあげる。

「お待たせ」




急に礼さんが戻って来たので、私は一瞬ビクッとした。




「あ…、すみません…、勝手に見せてもらってました…」




あわてて立ち上がり、写真と押し花をケースに戻そうとすると、


礼さんは持っていたトレイをローテーブルの上に置いて、私のところへやって来た。




「あー、それね…」




礼さんは私が持っていたものを覗き込んだ。




「あの…、もしかしてこれ…、渡さんの赤ちゃんの写真ですか…?」




私がとっさにたずねると、


礼さんは驚いた顔をして、「どうして知ってるの…?」と訊き返した。




「すみません…。実は私、前回こっちへ来たときに、美晴さんから礼さんと渡さんのこと、少し聞かせてもらってたんです…」




そう正直に答えると、


礼さんは「そうなんだ…」とテーブルの前に座り、私に渡さんとの過去を話してくれた。
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