チェリーをあげる。

私が写真と押し花とDVDを持ったまま突っ立っていると、


礼さんは押し花を指差して言った。




「その花はね、私が中絶した日に渡が持って来てくれた花なの」


「え…?」


「あいつ、星になった赤ちゃんに供えてやりたいって、わざわざ花屋で買って来てくれたんだって」


「……」




私は押し花に目を落とした。




「考えてみれば、亡くなった赤ちゃんにとって、その花が最初で最後の親からのプレゼントだったわけでしょ…?何だか記念に残したくなって、赤ちゃんの写真と一緒に取っておいたのよ…」


「へー…」




渡さん、礼さんの妊娠のことでホントにつらい思いをしていたんだね…。




なぜか自分のことのように悲しくなる。




そういうことがあったんじゃ、もう女の人と関係を持ちたくないって思うのも当然だよね…。




なんで私、


そういう気持ちを気遣ってあげられなかったんだろ…。




自己嫌悪でへこんでしまう。
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