チェリーをあげる。

「ごめん…。こんな話聞きたくなかったよね…。あ…、ねえ、ジュースでも飲んでよ…」




礼さんはジュースの入ったグラスをひとつ私の方に置いてくれた。




「すみません…」




言われるままローテーブルの前に座ると、


礼さんは「そうだ」と言いながら、本棚からアルバムを1冊出してくれた。




「渡の昔の写真とか見る…?」


「あっ…、はい…」




私がうなずくと、




「確かこのへんに美晴と3人で撮ったのがあるはず…」




礼さんはアルバムをめくって、渡さんが写っているページを探してくれた。




「あ…、あった…!これとかこれとか…。ね…?」




礼さんが何枚かの写真を指した。




その写真をそっと眺めてみる。



高校時代の渡さんは今とそれほど違わなかったけど、

まだメガネをかけていなくて、ちょっと幼い感じがあった。




私の知らない渡さん…。



礼さんのものだった渡さん…。




そう思うと、また落ち込んでしまった。
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