チェリーをあげる。
気を取り直そうとジュースに口をつけると、礼さんがまた口を開いた。
「渡のヤツバイトをかけ持ちしてるみたいだけど、あいつがどうしてバイトに明け暮れてるかわかる…?」
「え…?」
私はグラスをテーブルに置いて、礼さんの方を見た。
「あいつね、子どもの中絶費用を親に借りてるからって、高校時代からバイトで返済金を貯めてたのよ」
「えっ…」
それも初耳だった。
「けど、バイトに気を取られちゃって結局受験に失敗したでしょ…?浪人時代はバイトするのを親に許してもらえなかったみたいで、大学生になったとたんこれでしょ…?生活費だって自分で稼いでるってことだから、ちょっと驚いちゃった」
「そう、ですね…」
それで渡さん、あんなにバイト頑張ってたんだ…。
デートが安く済まされてたのもうなずける。
そういえば、私もお金を大事に使えと言われたことがあったな…。