チェリーをあげる。
そしてやって来た土曜日。
駅ビル地下街でバイトしている私は、勤務が終わる夜9時過ぎに、渡さんに駅まで迎えに来てもらうことになった。
バイトが終わると、
私はダサいエプロンからおニューのワンピースに着替え、駅の中のトイレへ走った。
鏡の前。
束ねてた髪を下ろし、念入りにメイク直しを行う。
その後ドキドキしながら駅のロータリーまで出ると、
約束の時間きっかりに例の黒い車がやって来て、私の目の前で停まった。
「ごめん。待った?」
運転席から降りてきた渡さんが言った。
彼はTシャツにジーンズという、いわゆる普通の格好だったけど、
私服姿の彼を見るのは初めてで、ちょっと胸がドキドキ言った。
「ううん、私もさっき来たとこ…。ごめんね、わざわざ迎えに来てもらっちゃって…」
私は早速助手席に座らせてもらうことにした。