チェリーをあげる。
女性アナウンスの声がする度に、海からどーんと花火が上がる。
火の粉がパラパラと落ちる度に、桟敷席から拍手が上がる。
素晴らしい光景にうっとりしていると、やがてこんな放送が聞こえてきた。
〈次はメッセージ花火のコーナーです…。ここからは個人で出資された方の花火を上げ、その方のメッセージを読ませていただきます…〉
「へー、そんな花火があるんですか」
礼さんにたずねると、彼女はこっちを向いて「そうみたいね」と言った。
〈メッセージ花火、まずは××地区のクズモトリョウさんの花火です。メッセージを読み上げます…〉
アナウンサーの声が響き渡る。
〈アヤへ…。就職してから少しずつお金を貯めてきましたが、最近やっと結婚資金が貯まりました。来春にでもぜひ僕と結婚してください…〉
メッセージが読まれたとたん、辺りからヤジや拍手が飛んでくる。
それは公開プロポーズとも取れる大胆なメッセージで、
花火は大きな音を立てて燃え上がると、赤や白のハートを描いて闇に消えた。