チェリーをあげる。

バイト初日。


店長は渡さんともうひとりのバイトくんに私を紹介してくれた。




「こちら新しくバイトに入ってもらう若井くんだ。橋尾くん、彼女にいろいろ教えてやって」




渡さんは制服姿の私に驚いていたようだけど、


店長が去ると、仕方ないとでも言うように私にひととおりの仕事を教えてくれた。




久しぶりに彼に会えたのは、すっごく嬉しかった。




でも、


渡さんは必要最小限の事務的な会話しかしてくれなくて、


私と目を合わせようともしなくて、


一緒にいると何かギクシャクした感じがあった。



まるで“俺に近づくな”オーラでも出されてるみたいな(泣)。




あーあ、


こんなんじゃ伸さんと一緒に礼さんに会いに行ったことだって謝れないし、


渡さんと復縁できる可能性だって薄そうだよ…。



せっかく渡さんと一緒にできることを見つけたのにな…。






でもさ、


自分からあきらめちゃダメだよね…?



私、渡さんのために頑張ることを決めたんだもん。




恋の女神様だって、


頑張ってる人のこと、そう簡単に見離したりはしないよね…?
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