チェリーをあげる。
時給アップ…。
それは願ってもない話だけど、こんな中年オヤジと付き合う気なんてさらさらない。
第一、私には渡さんという心に決めた人がいるし。
「あの、そう言ってもらえるのはありがたいんですが、お付き合いするってのはちょっと…」
苦笑いする私に、店長は表情を歪めた。
「何…?君、付き合ってる人とかいるの…?」
「えっ…?」
渡さんに「別れよう」と言われた以上、今はいないってことになるのだろうけど、
自分としてはそれを認めたくなかった。
今度はこっちが顔をしかめると、
「何だ、いないんなら何も問題ないだろ…?さみしいもん同士仲良くしようよ」
店長は私の手首をつかんだまま、その唇をこちらに近づけてきた。
「えっ…」
タイプでも何でもない彼の不細工な顔が目の前にあった。
ちょっと待って…!
ちょっと待って…!!
ちょっと待って…!!!
私、ファーストキスだってまだなんだよ…?
こんな中年が相手だなんて、絶対に嫌っ…!