チェリーをあげる。
私はまず、乗り込んだ車内に目が点になった。
ドアを開けたとたん、むうっとした生ぬるさというか変な暑さを感じた。
こんな暑いのにクーラーもつけてないのかと思ったけど、
とりあえず「お願いします」とにっこり、ゆっくりシートベルトを締めた。
すると次に、足元やダッシュボードになんだか埃っぽいものを感じた。
見ればカーナビは言うまでもなく、CDプレイヤーのようなカーステレオさえついていない車だ。
単に小さなラジオが付いてて、AMラジオのようなものが小さく流れていたんだけど、
渡さんがエンジンをふかす度に変にうるさい音がして、何がかかっているのかよく聞き取れない。
ポンコツなのか、砂利道を走っているわけでもないのに車内はガタガタと揺れている。
何、この車…?
そう思ったけど、
そんなこと、口が裂けても言えるわけがなく…。
私は思わず無言になってしまった。