チェリーをあげる。
淡い期待を抱きながら、
私は渡さんに、伸さんと一緒に礼さんに会いに行ったことをまだ謝ってなかったなと思った。
「そういえば私、勝手に礼さんに会いに行ったこともまだ謝ってなかったよね…」
私がまた謝罪すると、
渡さんは「ああ、その件ならもういいよ」と笑った。
「俺も少し言い過ぎたと思うし、雛ちゃんには何もしてやれなかったから、これでおあいこってことで」
「え…?」
渡さんはコーヒーの空き缶を自販機脇のくずかごへ捨てると、
再び私のところへ戻って来て、私の体をジロジロ見た。
「そんなカッコしてると、変な男に言い寄られても仕方ないかもな」
「え…?」
渡さんはふっと微笑むと、
「もう会うこともないと思うけど、雛ちゃんも元気で」
それだけ言って車に乗り込み、すぐに国道へと消えて行った。