チェリーをあげる。
家に帰る間も、家に帰ってからも、
私は渡さんの最後の言葉を頭の中で何度も何度も復唱していた。
“そんなカッコしてると、変な男に言い寄られても仕方ないかもな”
…確かに。
夏休みに伸さんとの騒動があったばかりだっていうのに、また店長に迫られたでしょ…?
やっぱり私って、変なオーラ出し過ぎなのかな…。
“もう会うこともないと思うけど、雛ちゃんも元気で”
それって今度こそ、ホントに私と別れるってことだよね…?
…嫌だ、嫌だよ。
私、やっぱり渡さんと別れたくないよ…。
こうなった以上、
やっぱり誕生日にお金をあげて、私の気持ちをちゃんと伝えなきゃ…。
私は貯金通帳を出し、今月バイト先から振り込まれた額をチェックしてみた。
しめて1万8千数百円也。
ダメだ…。
これじゃ全然足りないよ。