チェリーをあげる。

渡さんの誕生日当日。


その日は土曜日だったので、私は飲食店のバイトに行く前に渡さんに会う約束を取り付けてもらっていた。



待ち合わせの場所は、渡さんと初めてデートした、あの思い出の公園。




秋晴れの今日。


夜景は見れなくても、気持ちのいい時間が過ごせそう。



今日ばかりはお洒落に決めたいところだったけど、


私はそれをわざと断念、


メイクも服も地味でシンプルなものに決めた。






家を出た後。


私は緊張しながら駅までの道を歩いていた。




これから電車とバスを乗り継ぎ、


あの公園に行って、渡さんに自分の思いを全部告げるんだ。




そしたら今度こそ、私と渡さんの運命が決まる…。




どうしよ…。


なんか緊張してきたよ…。






そう思った次の瞬間、




私が手にしていたバッグは、後ろからやって来たスクーターの男性にすっと奪われていた。




「えっ…?!」
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