チェリーをあげる。

「ごめんね、エアコン壊れてるから、暑かったら窓開けて」




赤信号でブレーキを踏んだ渡さんが言った。




何、

この車、エアコンまで壊れてるの?




「あ…、うん…」




修理に出さないのかなと思いつつ、私は窓を全開にさせてもらった。




「悪いね、あんまイイ車じゃなくて」


「ううん…」


「この車、先輩に安く譲ってもらったものなんだ…。なんかその先輩も先輩に譲ってもらったみたいで、超中古ってかんじなんだ」


「へー」




そうなんだ…。


どおりでボロイわけだ…。




「でも、車あるだけいいよね…。私なんてまだ免許も持ってないから羨ましいよ」




とりあえず彼を持ち上げるような発言をすると、




「そう…?」




彼は目を細めて笑った。




「ホントは何このポンコツ車ってバカにされるんじゃないかって思ってた」




そう言った渡さんの横顔はやっぱり私好みで…。




そんな顔して言われたら、こっちだって笑うしかない。



私は本心を隠しながら、思いっきり作り笑いをした。
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