チェリーをあげる。

駅前を通り過ぎて国道に出ると、渡さんが言った。




「ねえ、お腹すいてない?」


「あ…、うん…。私はまかないをいただいてきたから…」




そう答えてみたものの、このところまともな食事をしてなかったので、


ホントはいつお腹が鳴ってもおかしくない状態にあった。




腹の虫が鳴かないことを祈っていると、渡さんが続けた。




「俺も寮で夕飯食べてきたんだけど、なんか小腹がすいてるんだよねー。ちょっとご飯食べに行ってもいいかな…?」


「あ…、うん…。いいよ」




どこかおしゃれなレストランでおいしいものでもご馳走してもらえるのかなとわくわくしていると、


再び渡さんに訊かれた。




「雛ちゃん、どこか行きたい店とかある?」


「え…?」


「どこがいい?」


「そう、ですね…」




私は少し考えて言った。




「じゃあ、渡さんが普段よく行くお店に行ってみたいかも…」




好きな人の趣向にはやっぱり興味あるし。




するとハンドルを握った渡さんが「了解」と笑った。
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