チェリーをあげる。
はあ…。
親にまで迷惑をかけ、情けなくて涙が出そうだ。
私がため息をつくと、
「雛、元気そうでよかったじゃん」
ベッドの脇に座っていた蒼がにやっと笑った。
「お前、夏休みに帰って来なかったし、ちゃんと生きてるのかって、みんな心配してたんだぜ」
「あっ、そ…」
姉が事故に遭ったというのに、こいつはいたわりの言葉ひとつかけられないのかと思っていたら、
「雛、俺さ、この夏ついに彼女ができたんだ。いいだろー?」
なんて言って、蒼はポケットから携帯電話を取り出し、
「これ俺の彼女。かわいーだろ?」
待受に設定された清純そうな女の子の写真を見せてくれた。