チェリーをあげる。

「失礼します」




警官に呼ばれて入って来たのは、


なぜか渡さんだった。




「えっ…」




気まずそうに「久しぶり」と言った彼に、驚いたことは言うまでもない。




「これ…、渡さんがこれ見つけてくれたの…?」




渡さんは「ああ」とうなずいた。




「あのさ、もし大丈夫そうなら、場所変えてちょっとふたりで話せないかな…?」


「え…?」




ふたりで話すって、一体何の話だろ…?




なんだか胸がドキドキしたけど、私は「うん」と答えて、ふたりでデイルームに移動することにした。




廊下に出ると、渡さんはいつものように早足で私の前を歩いていて、


その背中が遠ざかるにつれ、私の鼓動はどんどん早くなっていった。




一体何の話をされるんだろ…?




もしかして、


待ち合わせに行けなかったことやバッグを失くした不注意を怒られたりする…?
< 296 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop