チェリーをあげる。
気を取り直した私は、再び彼の車に乗り込んだ。
腕時計に目をやると、もうじき10時になるところだった。
想像から大きくかけ離れた初デートに混乱しつつあったけど、
もしかしたらこの後素敵なシチュエーションが私を待っているかもと思い直し、
私は彼に訊いてみた。
「ねえ、これからどうする?」
「そうだなあ…」
渡さんはしばらく間を置いてから、再び私にたずねた。
「雛ちゃんはどっか行きたいとことかある?」
「え…?」
またかと思いながら、私は素直に答えていた。
「じゃあ、夜景とか見に行きたいな…」
「え…?」
「確か近くに夜景スポットあったよね…?私まだ行ったことないんだ」
「あー、丘の上公園のこと?」
「知ってる?」
「うん。先輩達と行ったことあるし」
「そうなんだ…」
すると渡さんはこっちを向いて笑った。
「じゃあリクエストに答えて、今夜はそこに行きますか」