チェリーをあげる。

気を取り直した私は、再び彼の車に乗り込んだ。



腕時計に目をやると、もうじき10時になるところだった。




想像から大きくかけ離れた初デートに混乱しつつあったけど、


もしかしたらこの後素敵なシチュエーションが私を待っているかもと思い直し、


私は彼に訊いてみた。




「ねえ、これからどうする?」


「そうだなあ…」




渡さんはしばらく間を置いてから、再び私にたずねた。




「雛ちゃんはどっか行きたいとことかある?」


「え…?」




またかと思いながら、私は素直に答えていた。




「じゃあ、夜景とか見に行きたいな…」


「え…?」


「確か近くに夜景スポットあったよね…?私まだ行ったことないんだ」


「あー、丘の上公園のこと?」


「知ってる?」


「うん。先輩達と行ったことあるし」


「そうなんだ…」




すると渡さんはこっちを向いて笑った。




「じゃあリクエストに答えて、今夜はそこに行きますか」
< 32 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop