チェリーをあげる。

でも、


いざというときに限って、意外と気が小さい私…。




自分から「手をつなぎたい」とか「腕を組みたい」とか「抱き寄せてほしい」なんてことは、


どうしても言うことができなかった。




何度も渡さんの顔をちらちら見つめてみたけど、


私の気持ちが彼に伝わる気配もなく、


私達は夜景を眺めながら、しばらくそこに立ち尽くしていた。




渡さん、ホントに何もしてくれないのかな…?




そう思っていたら、渡さんが口を開いて言った。




「そろそろ帰ろっか?」


「え…?」




も…、もう…?



てか、


私達、まだ何もしてないよ…?




「雛ちゃん、明日もバイトなんでしょ…?だったら早く帰って寝た方がいいよ」

「え…っ」




渡さんは私の気持ちを聞くことなく、今来た道をまた早足で戻り始めた。
< 36 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop