チェリーをあげる。
でも、
いざというときに限って、意外と気が小さい私…。
自分から「手をつなぎたい」とか「腕を組みたい」とか「抱き寄せてほしい」なんてことは、
どうしても言うことができなかった。
何度も渡さんの顔をちらちら見つめてみたけど、
私の気持ちが彼に伝わる気配もなく、
私達は夜景を眺めながら、しばらくそこに立ち尽くしていた。
渡さん、ホントに何もしてくれないのかな…?
そう思っていたら、渡さんが口を開いて言った。
「そろそろ帰ろっか?」
「え…?」
も…、もう…?
てか、
私達、まだ何もしてないよ…?
「雛ちゃん、明日もバイトなんでしょ…?だったら早く帰って寝た方がいいよ」
「え…っ」
渡さんは私の気持ちを聞くことなく、今来た道をまた早足で戻り始めた。