チェリーをあげる。

アパート到着後。


「じゃ、おやすみ」とあっさり帰って行こうとする渡さんを、私は必死で引き止めた。




「あの…、せっかく来てもらったんだし、よかったら上がってお茶でも飲んでいかない…?」


「え…?」




渡さんの眉間に皺が寄った。




やっぱり自分からこういうこと言うのはよくなかったかな…。




そんな思いが込み上げたけど、ここで引いたら女がすたる。



私は自分の気持ちを率直に伝えてみた。




「あのね…、私、もう少し渡さんとお話したいなって思ったんだけど、ダメかな…?」




すると渡さんは言った。




「俺はいいけど、雛ちゃんは大丈夫なの…?」


「何が…?」


「明日もバイトだって言うのに、早く休まなくていいの…?」


「あ…、うん…。私昔から体力には自信あるし…」




私の言葉に、渡さんはやっとうなずいてくれた。




「そっか…。じゃあ少しだけお邪魔させてもらうよ」




やった…!



渡さんともう少し一緒にいられるよぉ…!!
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