チェリーをあげる。
部屋に戻ると、私は渡さんに適当に座ってもらって、そそくさとお湯を沸かした。
「お酒もあるけど、何飲む?」と訊いたら、
「じゃ、コーヒーをいただこうかな」と言われたからだ。
「お酒は飲まないの?」と訊いてみたけど、
「いや、飲むことは飲むんだけど、今日は車だからまた今度にするよ」と言われて、
“彼を泊まらせよう作戦”は既に失敗していた(泣)。
隣り合って座り、テレビを見ながら一緒にインスタントコーヒーを飲んでいる間も、
渡さんは私に触れようとしなかった。
…けど、
あんまり面白くないバラエティー番組の途中、
いったんコマーシャルが入ったところで、
ふいに渡さんがコーヒーカップをテーブルに置いて、私の目をじっと覗き込んできた。
「雛ちゃん」
「…え?」
渡さんの顔がどんどんこっちに近づいてくる。
…もしかして、
キス…
されちゃうの…?!?!