チェリーをあげる。

「そ、そうかな…?」


「そうだよ…。それにさ、別にパーマだってかけなくていいだろ…?」


「え…?」


「化粧だってもっと薄くていいと思うし…、それに、何…?」




渡さんはポールハンガーにかけてある私の洋服を指さした。




「服だってあんないっぱいなくてもよくない…?」


「えっ…」


「バイトしてるとは言え、まだ学生なんだし、もう少しお金の使い方を工夫したら…?」




渡さんはそう言うと、テレビに映った芸人に目線を移した。




「……」




私はなんて返したらいいかわからなくて、


コーヒーを飲み終えた渡さんをそれ以上引き止める気も起きず、


彼が「ごちそうさまでした」と帰って行くまで、そのまま黙りこくってしまった。
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