チェリーをあげる。

けど、


ドキドキしながらファスナーのあたりにフキンを置いたとたん、


渡さんがさけんだ。




「あー、いいよ…!自分でやるから…!」


「えっ…?」




あっという間にフキンは渡さんに取り上げられてしまって、渡さんは濡れたところを自分で拭き始めた。



それからひょいっと立ち上がって、




「ごめん。俺ちょっと着替えてくるから、先ご飯食べてて」




そう言って、さっさと食堂を出て行ってしまった…。




「なんだよ…。作戦その1失敗かあ…」




ひろぽんがため息をついた。




「あとちょっとで昼寝タイムにベッドイン!…だったのになー」


「けどさ、作戦は他にもまだあるわけだし、また頑張ればいいじゃん…?」




ちーちゃんが箸を動かしながら言った。




「…だよね。夜までまだ時間あるしね…」




私もなんとか笑顔を作って、再度みんなのグラスに水を注いだけど、


作戦その2は更なる心の準備が必要だから、私は内心穏やかではなかった。
< 89 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop