チェリーをあげる。
それから私はタオルを干したり歯を磨いたりしに行ったんだけど、
その間渡さんは黙々と参考書に目を通していて、私のことなんて文字通り目に入ってないようだった。
そういえば、テレビの主電源は落とされたままだ。
「渡さん、DVD見なかったの…?」
そう訊くと、渡さんは本から目を離さずに言った。
「うん…。夏休みの間だけ昼間塾でバイトすることにしたんだ。帰ったら早速授業があるから、ちょっと勉強しとこうかと思って…」
「へー」
私はまた渡さんに感心した。
渡さんって、ホントバイト熱心なんだなあ…。
「じゃあ、夏休み中に実家に帰ったりしないの?」
そうたずねると、
渡さんはこちらに目も向けずに言った。
「そうだな…。帰るとしてもお盆に2、3日程度かな…。ほとんどこっちにいると思う」
「そーなんだ…」
「うん…。お金貯めたいしね」
そっか…。
渡さん、親に負担をかけないよう頑張ってるんだね。
渡さんのそういうとこ、やっぱ尊敬しちゃうよ…。