チェリーをあげる。

それから私はタオルを干したり歯を磨いたりしに行ったんだけど、


その間渡さんは黙々と参考書に目を通していて、私のことなんて文字通り目に入ってないようだった。




そういえば、テレビの主電源は落とされたままだ。




「渡さん、DVD見なかったの…?」




そう訊くと、渡さんは本から目を離さずに言った。




「うん…。夏休みの間だけ昼間塾でバイトすることにしたんだ。帰ったら早速授業があるから、ちょっと勉強しとこうかと思って…」


「へー」




私はまた渡さんに感心した。



渡さんって、ホントバイト熱心なんだなあ…。




「じゃあ、夏休み中に実家に帰ったりしないの?」




そうたずねると、


渡さんはこちらに目も向けずに言った。




「そうだな…。帰るとしてもお盆に2、3日程度かな…。ほとんどこっちにいると思う」


「そーなんだ…」


「うん…。お金貯めたいしね」




そっか…。


渡さん、親に負担をかけないよう頑張ってるんだね。



渡さんのそういうとこ、やっぱ尊敬しちゃうよ…。
< 99 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop