Zero
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ビール女

このマンションへの引越しは一週間前だった。
家は13階だった。
窓が広くて外の夜景が綺麗に見えるけど、家賃は微妙に安かった。
13というか、イギリス人にとっては良くない数字だろう。
まぁ、いつでも一人で住んでいた僕にとっては、もう失われることがないから、心配は全然なかった。

でも、ちょっと寂しいよね。
13階で住んでいる人は6人しか居ない。
6人と言えば、3人家族の佐野さん、向こうのあのビール女、一人ぼっちの僕。

なぜビール女と呼んでるかわけがある。
あの女いつでも家でビールを飲んでる。
しかも、飲む前にはじっくりビールを見ていた。
飲んでから、静かに泣いてた。
いつもそうだった。

一体何があったのか。僕が良く分からない。
女のこころは分からないもんだからさ。

あの女がいつもスーツを着て、帰りが遅い。
どこかのOLだろう。
静かな性格が見えるけど、さっぱりやっている。
窓もカーテンもいつでも閉めてないまま、部屋に服を脱いだりとかやってる。
逆に僕が恥ずかしくて、あの女がシャワーに入るまでに僕が自分のカーテンを閉めた。

でも、カーテンを閉めた部屋は静かで、寂しかったような気がしたから、カーテンを開いた。

何時の間に、あの女を見守ることになった。
シャワーが終わるまであの「ビール女」を待っている。
この時、彼女の携帯は鳴いてる。

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