Zero

名もない存在

彼女はそのまま寝込んでしまった。
偶に寝言を言っていた。
じっくりと聞き、
確かに、「ごめん・・・」っていう言葉だった。

この結んだ唇から、吐き出した言葉は謝りだった。
彼女に、一体何があったのか。
何か疚しいことがあったのか。
若くて美人なのに。

この逞しい唇の輪郭を構えたのはどんな心だろう。
この後は、涼しい夜に抱かれてよく眠れた。

暫く時間をおいて、手で彼女の熱を計ろうと思った時、
彼女はやっと目が覚ました。
熱がなくなって、少しでも回復したようだった。

「あー、君、やっと目が覚ました。」
この言葉を聞き、驚きもせず、彼女は僕の目を見つめた。
恥ずかしいながら、自己紹介をはじめた。

「あーちょっと遅れたけど、自己紹介をさせていただきます。向こうの部屋で住んでいる零崎信(ゼロザキマコト)と申します、夕方の頃、倒れた君を見つけて、勝手にお家にお邪魔する事になりました。覚えていらっしゃいますか?夕方ごろ自分の部屋の前倒れたってこと?」

彼女は頷いた。
「よかったね、少し元気になったようで、僕も少し安心しました。そうだ、あそこ、僕の部屋、見える?今電気付けている部屋。何があったらいつも呼んでもいいよ。独り暮らしは大変だから。」

「ありがとう、私、相川愛と言います。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。」

「大丈夫だよ。気にしないで、ご飯、どうする?さっき自分の部屋でお粥を作ったけど、少しでもいかがですか?何も食べないと体調崩れるから。」

「うん、じゃお願いします。」

「うん、いいよ。持ってくるから。一緒に食べよう。」
「すみませんでした。」
「いいよ。気にしなくていいから。」

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