Zero

愛の喪失

僕らは仮面に隠され、
そうした自分を醜く感じることもない。

自分が望むような人間とは、
見えて来なくなる。

ありのままでいいんだと思っていたのは我儘なのか、
傷つくことが怖いわけなのか。

「信さんは優しい人だね。」吉本は僕の目を見つめ、
洞察しているような目線でそういってた。

「なんだよ！この目は何？勘弁してくれよ。恥ずかしいから。」
正直、吉本のその目をみると、広がっている岸のない海に溺れている感じ。

自分が自分を海の底を引っ張ってくって気がする。
なぜだろう。

「そうか、今年いくつ？」

「１９だよ、来年成人になる。」

「そうだ。これから一人暮らしになって、気をつけないといけないことがいっぱいあるけど、生活を楽しむのも大事。」

「だんだよ。今日は初対面でしょ。何でそんな言い方をするの？まるでずっと一緒に住んできたお兄さんみたい。」

「お兄さんが居て、いいじゃない？」

「いやだ。もう子供じゃないし。」

「子供だよ！」ちょっと勝手だけど、そう言い出した。

「いつか大人になって、信さんに見せたいね。」

「いいよ。いっぱいがんばって、いっぱい経験をして、いっぱい成長しよう。」この吉本とチャットしている内に、青春って匂いがするけど。

「どうでもいい。まだまだ時間いっぱいあるし。」吉本は手を差し伸べあってそう言ってた。

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