Zero
「そうだ、アパートはどこ?今日一緒に夕飯をおごって送ってあげようか。」

「大学の寮だよ。一年目は、来年から出るよ。」

「そうか。珍しいね、でも、寮もいいね。」

「お母さんの勝手だよ、寮は門限あるし。」吉本はがっかりした声で言ってた。

「はは。自由になりたいのは子供だね。」

「子供じゃないよ。そうだ、ごめん、お土産。さっき忘れてた。」そう言いながら、吉本が後ろに置いた手袋を出した。

取り出したのはお守りだ。

「これ、信さんのほうこそ、子供じゃない?一人で生活できるかなー超心配だけど。」吉本にからかわれた。

このお守りを見て、お母さんの「早く結婚しろう!」っていう顔が見えてくる気がする。

とにかく、変哲のない一日だった。

大体、出会うのは難しいと思う。

この世の中、何処か離れているところでぼくのことを待っている人がいるのかなー
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