Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
ユリちゃんが
『Azurite』のTシャツを見つめてる
深い青地に、手書き風文字で
『Azurite』って書いてある
シンプルな奴だ
後は、白地に
モノクロ写真のプリントが
真ん中にあって、で
耳の部分だけ
ピアスだけ青い―――
「……今日、一緒に出るんだよね」
ユリちゃんはそう言って
"これも下さい"と
Tシャツも買った
……そうだ
『アズ』って、
一緒の事務所だし
あの事件、知らないわけないもん
――…
今は別々のだけど
昔の仲間なら、
真っ先に駆け付けた気がする――
「知らないみたい
彼女」
「…え?」
マキちゃんが見透かすみたいに
声をかけてくる
「……海外に居て
事務所の人達も知らせなかったって
アニキが言ってたんだけど
あのベースね」
「…うん」
「…『彼女』が買ったんだって
自分達も、一緒に、
楽器屋行ったんだって」
「…うわあああ………」
―――それを聞いた途端
涙がブワーーっと出て来て
うちらみたいに
騒ぎながら
バンドの皆で、
楽器を選んでいるのが見えた
慌てて涙を拭いた
そして
「…ア、アズってさ
お金持ち?!
当時そんな楽器買えるって
すごくない?!」
マキちゃんは笑いながら
「そうだねえ
でもスラストファーの娘だから」
「ああ!!そっかぁ!」
『Azurite』は
最近公表されたんだけど
有名な音楽家の娘だったんだって
それを皆『あ〜 なるほど〜』と
納得したんだ
そういう人は、
そういう風になるんだなと
音楽室で溜め息ついたんだ
……あの後、
ツアー中なのもあったのか
一回、青山さんからメールが来た
『無事、ベース見つかりました
心配かけてごめんね』
私はそれに
『よかったです!!
皆で心配してました!』みたいな
そんなメールを書いて
電話はしなかった
「…よくわかんない間柄だよね
あの二人」
そう言った私に
マキちゃんは笑って
青い空を、見上げる