Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
最近
ベースも背負ってなかったし
新宿の空気は
駅やデパートのアーケードから出ると
ねっとりと張り付く
首に汗が溜まって
手の甲で拭いても、
次から次へと出てくるんだ
――周りの店は見ない
足元の、道のタイルや
模様だけ見て歩いて
お昼でビルから湧いて来る人の
綺麗な足先を
ただ見送る
ムキになってるのかもしれない
私がこのまま…
『彼』を眺めるだけの道を認めて
地元の短大を出て
就職して―――――
そして何年かしたら
きっとあの波の中の一人になる
その波の中の人達を
否定してるわけじゃないよ
お父さんだって
毎日毎日、あの波の中で働いて
その中に『家族を守る』っていう
スゲー使命を担っているヒーローだ
ウチでカレーのルーが
一種類じゃなかったのを
初めて知った私とは
訳が違う―――
……ホントはお父さん
何になりたかったのかな
大人って、大事なことは
言わない事がある
青山さんだってそうだ
…先生が言わなかったら
そんな過去があったなんて
全然知らないでいたんだ
――― 信号
ちょうど青になって
…点滅しだす
私はなんとなく
『今渡らないとダメ』みたいな気分で
走り出した
「 …ユカちゃん?!」