Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
夕闇の海風の中
『彼』は一旦周囲を見回して
何か音に耳をそばだてるみたいに
目を閉じた
そして
携帯に向かって、口を開く
『……一度、切ります
そちらにもし連絡行ったら
電話を下さい』
私は
飲み込め無い事情を
把握したくて
彼のシャツをひっぱった
『彼』は
かなり体に力が入っていたけど
『…油断した』と言って
その場にしゃがんだ
『……"彼"から電話だった』
「…彼って?」
『"そこに、アズいますか"って
相当焦ってた
……向こうも野音のテレビ見てて…
変な予感がして
電話かけて来たらしい
悪い… 行く』
『彼』は
ポケットからサイフ
そして何かのキーを取り出して
ログハウスの向こうにある
硝子と、
黒いラインの四角い建物に走った
私はただ彼を追って
―― その建物には
守衛さんみたいな、
管理人さんみたいなお爺さんが
受付窓に座ってて
『彼』が
『…俺、バイク出します』と
一言、声をかけると
「わかりましたぁ」と
にこやかに笑う
銀と黒のバイク
種類なんて知らない―――
『彼』がヘルメットをつけて
大きなエンジンの音
私はその後ろに
咄嗟に飛び乗った
『 …ユカ 』
低い声に、反論する
「…絶対、降りない!!」
ドドドド と
腰の下から、振動が来る
それが安定して来た頃
また『彼』が、私の名前を呼んだ
『…5分待つから
その格好じゃ危ないし
仕度して来い』
「…そんな事言って
置いて行く気だから嫌だ!!」
『……冴えてるじゃん 』
―― やっぱり………
彼の腰にしがみついて
絶対離れないぞ!と思う
バスローブのままだけど、関係ない。