Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
硝子のスワロフスキー
―― 夕立
池上さんの運転するキャンピングカーは
かなり古い
でもきちんと手入れされていて
この車が大好きなんだなって
すぐに解った
アニキは助手席で
携帯と手帳を取り出して、
どこかに必死に連絡してる
そして
「…ボウズが向かうって行ったら
屋上しかない」
そう言ったけど
池上さんが、ほよよんと
「う〜ん でも今
下の鍵かけてるから
あがれないでしょう」
「そんな事、考えるか?!」
「…出て行った時には
感情で動いたんだと思うけど
――咄嗟の判断は
かなり冷静にする子だから
…僕は、違う場所だと思う」
「……どこだよ
代乃木野外は、まさかだし」
「うん 別に、
傷跡を辿るつもりはないだろうから…
そういう子なら、捜すの楽なんだけど…」
「―――新宿Jemuは…?」
私がそう言ったら
アニキが
「…オレもそう思って
Jemuの事務所には連絡して
部下にも行って貰う様に電話したとこだ
とにかく、東京に戻ろう」
私は慌てて
アズさんが置いて行った鞄を開いた
―― 女の子なのに
なあんにも入ってない
…私だって、ポーチの中に
もう少し色々入れてるよ
…薬が………五種類位と
薬用リップが一個
そして、私がそれを見て黙っていると
青山さんが、ふいに声を
かけて来た
「……ユカちゃん?」
私はその束を
青山さんに黙って渡した
…その束っていうのは
道で配られる、小さなチラシ達
美容院とか、酒屋とか
ティッシュなら、無い時に
受け取ったりするけど
チラシなんかは、私は、お辞儀しながら
――友達といる時は
普通に無視して、通り過ぎる
そういうの全部
受け取っているんだろう
少し角が丸くなって
鞄の端に、入ってた
「……すぐあいつ
貰いに行っては、貯めるから……
よく"捨てなさい"って」
「………青山さん 皆
違うよ
――― アズさんは
本当に、
違うよ、皆 」
上手く、言えなくて
言葉がまとまらない