Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
『彼』はシャツを脱いで
緑川さんから投げられた濡れタオルで
頭をワシワシ拭いてる
「にしし。ごめんね?」と
アズさんに手伝われて
あからさまに嬉しそうだ
「服は?」と聞かれ
『…少し暑いからこのままでいいよ』と
私の左横の椅子へ
「そういえばさ」
『…何 』
「あのバイク、何て名前なの?」
『…イルミネータ 』
「 ほぉぉお 」
『彼』は肩肘をついて
私を見て笑う
『…随分、余裕だね』
「な 何が?!」
『…あのドラマーとか
真木さんの妹と俺が話してた時
凄い顔してたのに』
―――き、気が付かれてた!
「だっっ だって!
アズさんは、あんたの……だし…」
『…へえ あの話、信じたんだ』
「 ?!
う、ウソなの?!」
『…さあ
アズ、俺にも うどん盛って』
ア然として
口をパクパクさせる私に
アズさんが不思議そうに
問い掛けて来る
「何の話?」
「え…あ…」
『…アズ可愛いって 俺が言っただけ』
それに対してアズさんは
まだちょっと
不思議そうな顔をしながらも
彼の前に、うどんを置き
頬に人差し指をあてて
「ありがとう?」と笑った
『………青山さん』
「ん?」
少し遅れて、
『彼』の横の席についた
青山さんに、彼が言った
『…アズに"可愛い"って
言ってみて』
青山さんは
アズさんの顔を見て
「あずる …可愛い」
低い声で優しく言った途端
アズさんは目で解る位、
顔も全身も真っ赤になって
顔を覆って、しゃがみ込んだ
青山さん自身も
その反応に驚いて、顔が赤くなるし
緑川さん、池上さん、赤池さんは
爆笑しながら、冷やかすし
アニキは
踏ん反り返りながら
仕方ねえなあって顔で
苦笑いしてる
『……この違いって』
『彼』は机に突っ伏して落ち込み
私もおかしくて、大笑いしながら
『彼』の肩を叩いた