Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
「…理由は判ってるんだ
でも認めたくないから
焦って、おかしくなってる。」
「…何なんですか?」
「――多分、ユカちゃんの
俺の中のイメージが崩れるから
言わないで置くよ
…早めに帰りますわ。
ユカちゃんも
後、数日で学校だろ?」
「…はい 」
緑川さんは
煙草を口にくわえてから
しばらく胸ポケットを漁ってたけど
「取って来るわー」と
ひょこひょこと、ログハウスに走った
赤池さんが
波際で、ふざけながら
乱闘している皆を眺めつつ
持っていた缶ビールを砂に刺して、
柔軟体操
「ず〜っと、オフは寝てたよ」
「 え? 」
「溜まってた、録画見たり
色々予定立ててたんだけど
でも夢の中でも
ドラム、弾いてた」
「アハハ」
「ユカさん
楽器は、逃げないからさ」
「………」
「…楽器から 音楽から
勝手に逃げるのは、
人間の方で…
それに三つ位、先の事ばっかり
夢を追ってる時は、考えてしまうし
目の前の事じゃないから
実は、楽なんだけど
それが"逃げ"の場合も多いんだよね
…俺はあまり、
器用な人間じゃないし
やっぱり、ここの皆の中で
一番オッサンだから
あまり焦って
変な選択は、若い娘さんには
して欲しくないよ?」
「……はい 」
「 そして若い時は
"どこかの誰かが
絶対見出だしてくれる"とか
変な自信と幻想があるんだけど
ライヴハウス、オーディション
何でもいい
身内以外の誰かが
見てくれる場所に行かないとね」
「……でも、怖い、デス」
「そ〜ね〜
俺と緑川なんかも、昔、
あるオーディションで
審査員だった某プロデューサーに
『あんたら才能ないから
もういい加減やめたら?』とか
鼻で笑われた事あるし〜」
「ええええ?!?!」