Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



さりげない誘い方とか
苦手な私は
一瞬アズさんの周りの皆に
不審な顔されたけど

流木で砂浜に絵を描いてた
その手を引っ張って、
緑川さんと赤池さんのトコに
連れて来た。


開いたハンカチの包みを見せた途端
アズさんもわかったみたいで

私は、ユリちゃんみたいな
涙目になるのを想像してたんだけど


――アズさんはあからさまに
しかめっつらをして

「…口で言えばいいじゃん…」と
呟いた


もう、一斉に私達は大笑いで


でも ハッと気が付いた

「アズさん!でも
ただ、家に帰るだけかもしれないけど
このパターンだと、
外国に行くつもりかもしれないよ?!
いいの?!」



アズさんは、即答。

「女の気を引く為だけに
外国演出する男だったら
願下げだよ

…本来は、絵を撮りに、とか
きっと目的があるんだろうから
…それなら、自分の夢の為に
行くべきだもの

私は、とめたらいけない…」



――緑川さんが
ジッと、アズさんを見つめてる



「…それにもし会いたくなったら
私、自分で 会いに行く」


アズさんが後ろ手を組んで
強い目で、にっこり、微笑んだ



「………アズさん
あの人と、どんな約束、したの?」



「……私の事
何処かでまだ、
虚像キャラ扱いしてる部分あって

――― 私は無敵じゃない

何言われても、されても
平気なんて、あるわけない


淳は、"親掛かりじゃなくて
自分で作った自信を持って
私の前に立ちたい"って言った
"それまで会いに来ないし
その時また、告白する"って

だから私は
"わかった"って言った


…私は、女神なんかじゃない


……こんなナンパの
気を引く作戦みたいのに
乗ってなんかやるもんか」


「…対等って 事か 」


緑川さんがそう言うと
アズさんは
「うん」と、笑う



……一瞬なんだか
頭に被った、白いパーカーのフード

手に持った流木が
杖みたいに見えて

目を、擦った






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