Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜





袋の中にはロウソクが一個

青山さんが長い指の手で
砂山を作って、そこに立てる

ジッポのライターで
火を着けると
周りが少し明るい

そこから私とマキちゃんは
先がクルクルに巻かれた
棒の花火を選ぶ

ロウソクにくっつけると
白い火花が噴き出し

―― 白から黄色、赤、青に
シューシュー音をたてて、変化して行く


マキちゃんも、私も

……嫌いじゃないんだけど
線香花火は取らなくて
派手そうなのを、次々選んで持った


携帯に着信音
――自分のじゃない
青山さんが取る

「はい」と言った後
立ち上がって
少し離れた所まで歩く
会話した後、切って

「気をつけて火、着けろよ」と

その場で砂浜に座った


「青山さんやんないのかな」

「ね」

私とマキちゃんがそんな話をしていると
後ろから声


『…何で線香花火だけ残ってんの』

『彼』が起きて来た

袋をバサッと下に置いた手に
線香花火の束ひとつ


「……だって
線香花火って、寂しいよ」

そんな本音が、つい出てしまう
マキちゃんも小さく「うん」と言って
波風に揺れる長い髪を
一旦後ろに流して、しゃがみ込む


『…まとめてやればいいじゃん』

「……え ?」


『彼』は
線香花火を纏めている
金色のテープを剥かないで
そのまま上の、赤い薄い紙を握って
ロウソクに翳した




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