Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
ユリちゃんが小さな
赤と黄色と白の
レジャーシートを拡げて
武藤が風で翻るそれの端を、
上履きを置いて とめた
山下くんも、それにならって
上履きを脱ぐ
紙コップまで、
ユリちゃんは持ってきてて
ポットから湯気の立つお茶を入れて
二人の前に置いた
私もバックを開いて
元は
"お得用かつおだし"が入っていた
特大タッパを、ドーンと置く
それと、茄子の漬け物。
ユリちゃんの方は、
八百屋さんだけあって
サラダとか、煮物のタッパが
オニギリとは別に、用意されていた
「今日はこんなだけど
うち商店街だから〜
お惣菜安いし、
お隣り天ぷら屋さんだし
店屋物多いのよね〜」
「これ "ユリちゃん"が
作ったの?」
「うん〜 オニギリは
お母さんが握ってくれたけどね〜
さあ 皆さん どんどん食べて〜」
「すげえなー!いただきます!」
武藤は正座をして
受け取ったお箸を挟んで
両手を合わせて、お辞儀。
山下くんは
今、私が開けたオイナリさんに
サッと、箸を伸ばした
「…山下 オイナリ、好物?」
「うん
世界が終わる日に
食卓に並べたい一品」
「……変わってるね」
「じゃあ"ユカちゃん"は
何食いたいんだよ」
「…………これ 」
「…茄子の、漬け物…?」
「…悪い?」
「…やっぱババ…」
殴ろうとした私を
ユリちゃんが制止した。
―――― オニギリを頬ばりながら
茄子をつまんで
「…美味いなあ… マジ天国…」と
武藤が
高い空を仰ぎながら呟く
「 あ 」
私の携帯にワン切り。
マキちゃんだ
「お。 」と武藤も判って
閉めていた屋上の鍵を開ける
「誰か来るのか?」と
山下くん
言った途端に、扉がゆっくり開いた
「…こんにちは…」と
マキちゃん
武藤が「遅かったじゃん」と笑う
「私もコンビニ組だったから
一応差し入れにと思って
デザート買って来た」
「やった〜!」と
ユリちゃんは大喜び
…………そして