Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜


…私が絡むと
『彼』にいつも迷惑をかける

それに対して、
『彼』は文句は言わないけど

だから、何かその『壁』は
私の毒牙から
『彼』を守ってるみたいに
見えるんだ



"あの頃に帰りたい"とか

百万年早い台詞なのかもだけど
もう一度、あのライヴハウスに
帰りたいって、…思う


「マキ、葉山さん、行くぞ 」


"アニキ"が
マキちゃんと私を呼ぶ声がした

赤池さんも、緑川さんも
青山さんも
『彼』も こちらを見てる

またねー!と赤池さんと
緑川さんは、手を振って
青山さんは腕を組んで
片手で手を振った


『彼』は……
黙ったまま、あの灰色の目で
こっちを見て、何にも言わない


マキちゃんとアニキが
停めてあった白い車に近付くと
"CheaーRuu"は
ガラスの扉の方へ、歩き出す


何か、最後に
声をかけたかったけど
いっぱいありすぎて、
どれを引っ張り出して来ていいか
…解らなくて

―――――――― 結局


後ろ姿の『彼』に
ひっそり一度だけ


「……やっぱり好きだなあ」って


一言だけ呟いて
ちょっとだけ、泣いた







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