Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜

我が家の小さな門の外まで
"アニキ"を送る

「おい
ユカちゃん、ここでいいぞ」


「あ はい…!」



鉄柵に
手をかけた所で、制止された

助手席を見ると
―― マキちゃん寝ちゃってる

『彼』は
私が居た場所も占領
横になって、腕を伸ばして寝ていた


"アニキ"は
ヒョッと腰に手を当て、曲げて
横から私を覗き込む

後ろ髪の尻尾が、肩の前


「 平気か?」

「…え 」

「 怖かったろ」


…なんだろう…

確かに一瞬怖かったけど
今もワケわかんなくて、嫌だけど…


「…あんまり…怖くは
ベースの事で頭いっぱいで…
―― 『彼』も居たし」



アニキは
困ったみたいに笑って
腰を戻して、空を見る


「…そういう所なのかな
灰谷や、青山が
ユカちゃんを可愛がるのは」



「ぬぉ?!
青っ山さんはアリですが
『彼』には可愛がられてませんよ?!

確かにっ
ベースは探して貰って
感謝してますけど……」


"アニキ"はいきなり
デコピンの真似をして
私の額の前で構える


「逃げないでちょっと来い。」


私は驚いて笑いながら後退し、
"アニキ"は上から見下ろしながら
ツカツカと進んで来て
笑い、立ち止まってやめた

そして踵で、クルッと回り
「じゃっ」と敬礼して


―――…今までのふざけ合いが
無かった事みたいに
運転席に廻り、ドアを開いた



……ポケットで
携帯のアラームが鳴ってる

九時からテレビで"CheaーRuu"出るから
セットしといたんだ


携帯を止めていたら
車の白い影が左へ


私は、慌てて
門の手摺りに掴まり

走り出した白い車の
ガラス窓の向こうの
見えない『彼』に



「………またね!!」

そう、独り叫んで

手を降ろした






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