Lovely☆愛すくりーむ
過去、
「きょーっ!!きょーうっ!!」
誰かが俺に向かって手を振って走ってきた。
そこにはツインテールの少女が。
「きょー、海行こう!海!」
満面の笑みをみせた少女。
「お父さんがね、お仕事休みだから連れて行ってくれるのっ!」
そういって俺の手を引っ張った。
──5歳の俺と5歳の幼馴染の少女。
俺はそのころ無口だった。
あまりにも喋らないから両親がよく心配したものだ。
「きれーい!」
少女は車窓から見えるキラキラ光る海を眺めた。
俺は海を見るのは初めてだった。
そして幼馴染の少女も、初めてだった。
車から降りると俺達は一目散に海に向かって走り出した。
俺は『海』に足をつけてみた。
「冷たい」
その『海』は風呂の湯とは違い、足が入った瞬間、ヒヤッとしていた。
でも、それは夏場の暑い空気で火照った体を冷やしてくれるようで、俺に快楽を感じさせた。
ずいぶん遊んだ、
流石にちょっと疲れたな、と思い俺は砂場にごろりと寝転んだ。
目に入るのはギンギン光る夏の太陽。
ぼんやりとしていた、そこに少女はやってきた。
「ねえ、トンネル造ろうよ!!」
「いいね。」
ベトベトになった手で一生懸命砂を掘ってはつみかさね、大きな砂の山が完成した!
「えへへ、かーんせいっ!」
俺はじぃっと砂山を眺めた。
その時の俺はほんの少しだけ心が軽くなったような、フワッとしたような、今までにない衝動がおきた。
ひとつの事を達成するのにこんなに一生懸命になったのは初めてなのかもしれないぐらいだ。
でも、そのときの俺は『嬉しい』という感情がまだわかっていなかった。