分け合う秘蜜
ありありと示される
そんなもの、いらないのに…。
「まあ、そんなことより
早く教えた方がいいよな」
そう言って、あたしに
解き方を教えてくれる先生は
いつだって、同じ顔。
あたしなんか見もしない、
横顔。
遠くて、近づきたいのに…。
頻繁にあたしが来るから、
迷惑に思ってる?
相手をするほど暇じゃないって、
そう思ってる?
「海智、大丈夫?
俺の説明、なんかおかしい?」
「えっ……?」
ハッとすると、不安そうな先生が
あたしのことを見ていて。
あ…話、全然聞いてなかった。
失敗したな、って唇を噛んで。
少しでも長い時間、
先生の声が聞いていたいの。
でも、1人で寂しく思うなんて、
そんなの耐えられない。
ドクっと鳴った心臓は、
多分あたしの味方なんて
する気がない。