分け合う秘蜜






ありありと示される
そんなもの、いらないのに…。


「まあ、そんなことより
早く教えた方がいいよな」


そう言って、あたしに
解き方を教えてくれる先生は
いつだって、同じ顔。


あたしなんか見もしない、
横顔。


遠くて、近づきたいのに…。


頻繁にあたしが来るから、
迷惑に思ってる?


相手をするほど暇じゃないって、
そう思ってる?



「海智、大丈夫?
俺の説明、なんかおかしい?」


「えっ……?」


ハッとすると、不安そうな先生が
あたしのことを見ていて。


あ…話、全然聞いてなかった。


失敗したな、って唇を噛んで。


少しでも長い時間、
先生の声が聞いていたいの。


でも、1人で寂しく思うなんて、
そんなの耐えられない。


ドクっと鳴った心臓は、
多分あたしの味方なんて
する気がない。


< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop