分け合う秘蜜
目の前にいる、いかにも
頭悪そうです。という雰囲気を
醸し出した長身の男を見据えて
ため息をひとつ。
「だから、32にもなって
彼女の1人もいないんじゃ
ないんですか」
嫌みたっぷりに言うと、
その態度にイライラしたように
「女の方が見る目がねえんだよ、
世の女たちの目を俺は疑う」
なんてナルシストも良いところ。
自分のその暴力的なところが
いけないんじゃないの!?
心の中だけで叫んで、
もう一度ため息をつく。
塾長に構ってたらキリがない。
こうやって一度絡んだら、
ずっと絡んできてどうしようもない。
「で?海智はなんで
泣いてたんだって
俺は聞いたんだけど。
答えねえの?」
「っ……」
痛いところを突かれたあたしは
帰るに帰れなくなってしまう。
このままじゃきっと、
明日の先生たちの話のタネにされて
いろんな人に笑われるんだ。