センチメンタルな季節【短篇集】
そして、今。

熱気のこもった青臭い部屋の中。

私は彼の足の爪にビビッドな赤色のペディキュアを塗っている。


「なー、なんでよりによって、赤色なんだよ。かっこ悪い」

頭の上で喚く彼を無視して、右足につづいて左足へ。

風通しの悪い部屋だから、ペディキュア独特の匂いがさらに充満する。

わたしたち、このままだと二人とも死ぬんじゃないかと不安になるけど、今の私の判断能力は室内40度の暑さでイカれていて、目の前にある足が優先だったり。

だって、こうして爪を必死で塗っている間にも私は身に布一枚も纏っていないんだから、「イカれてる」の一言。
それにしても、男の人の爪って大きくて四角くて、とっても塗りやすい。
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