センチメンタルな季節【短篇集】
彼は降参のポーズで、そのまま後ろへ倒れた。
「もう、お前の色にしてくれよ」
おいおい、それは普通、私のセリフでしょ。
でも、彼に言われて悪い気はしなかった。逆に感じるのは、妙な気持ち。
その、「妙な気持ち」の正体を知るのは、なんだか陳腐なことだと思った。
私は腰を揺らめかす。
彼の腕は私の方へ伸びてきて腰をつかんだ。私は彼よりも先に、と思って上体を彼に倒し、そのままキス。
キスのあとは何をするかって、いつも決まっている。
おとぎ話みたいに、キスをしてめでたしめでたし・・・じゃなくて、
もっとドロドロした大人の世界。敏感になった私の体はさっきよりも、さらにそれを感じ何度も彼の名前を呼んだ。
私が塗ったけど、
「つま先が赤い男なんかをこんなに愛しているんだから、私の髪の毛1本1本も愛してよ。」
ぐらぐら揺られながら、彼の耳元で囁くと私の髪を一房手に取りゆっくりとキスをした。
彼に愛された私の髪はサラサラと肩から零れていった。