センチメンタルな季節【短篇集】
秋は好きだけれど、切なくなる。
その原因は、大好きな橙色の小さな花のせい、だろう。
大好きなあの香りが、わたしをどこかノスタルジックでセンチメンタルな気持ちにさせる。
秋の夕暮れなんて本当に道端で涙を流しそうになる。切なくて、どうしようもなく、胸が締め付けられるように。
そういえば、あの人は秋が好きだったなあとぼんやりと振り返りながら金木犀の香りを少しだけ、すこしだけ楽しむ。
今度また訪れる秋もこうして金木犀のやさしい香りに包まれて何の変哲もない道を歩きたいね、と我ながら恥ずかしいセリフを伝えたあの人は、今はもう隣にいないのだ。