センチメンタルな季節【短篇集】
 そういえば、あの人はこの金木犀の花が好きだったなあ、とのんびりと思い出す。

―金木犀の花は遠くから香りを楽しんだ方が、僕は好きだな、

そう教えてくれたあの人は、あのときどんな顔をしていたのだろう。

―ほら、少し離れると金木犀の香りがよくわかるよ、

そうだ。あの人は少年のような笑顔をする人だった。
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