センチメンタルな季節【短篇集】

 小さい頃、裏庭にある金木犀の枝をを母に切ってもらったことがある。
自分がやればよかった、と今でも後悔をする。あの時、金木犀の枝を切っている時に、母が毛虫に刺されたのだ。

「金木犀を部屋に飾りたい」と言い出した幼いわたしは救急箱を取り出す母に罪悪感という言葉を知らないまま、申し訳ない気持ちでいっぱいに なった。

もしかしたら、わたしが金木犀の香りでなぜか切なくなる理由はこの時から生まれていたのかもしれない。そういえば、あれから金木犀を切ったことがない。

彼の言うとおり、すこし距離があったほうが良いらしい。金木犀との距離は。
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