天使の涙(仮)
そして、それが貴弘にあると、私に触れた貴弘に感じたからだ。

「翔は孤独ってどんなのかわかる?一人きりとは違う。まわりに友達や家族がいても、世界で私しか存在してないんじゃないかって程に悲しくて、寂しいんだよ。………もう、……孤独は嫌なんだよ。」

ずっとずっと独りきりだった。
それは自分で選んだ道でもあったけど、いつしか暗闇に慣れてしまったこの目が光を欲しがった。
どんなものでもいい、あの頃の眩しかった世界に戻りたいと思った。

でも、怖かった。
同じことを繰り返してしまうんじゃないかって。
またいつか独りぼっちになるんじゃないかって。
あんな思い、もう二度としたくない。

それでも望んでしまうのは、私の中に生きてる欲望なんじゃないかと思う。

「孤独か孤独じゃないかは、自分の気持ち次第なんじゃないかな?…でも、俺はショックだな。実々にとって俺は何の意味も持ってないみたいだ。こうして二人でいても孤独を感じてるの?」

悲しそうに笑った顔が、今にも消えてしまいそうだった。

翔と一緒に居て孤独だなんて思ったことなんてなかった。
むしろ、こんな自分がマシな人間になった気さえする。
だからこそ、翔がいないときは、自分がどれだけ寂しい人間なのかって思い知るんだ。
私の中で翔の存在はいつしかとても大きなものになっていた。
当たり前のようにあるようで、そうじゃない。
大切なモノだからこそ、尊いモノだと、当たり前なんかじゃないんだと思う。
だから、それ以上でもそれ以下でもなく、二人が居続けなくてはいけないんだ。

失いたくない、絶対的な存在だから…。
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