天使の涙(仮)
授業が終わり、学校から駅までの道をトボトボと歩いていた。
パスケースがないことに気がついて、鞄の中、制服のポケットを探しても見付からなかった。
もしかしたら、なんて思って、そのまま学校に向った。
教室には誰もいなくて、私の足音だけが響いた。
自分の机の中を覗く。
でも、何もなかった。
財布には543円。
これでは帰れない。
銀行のキャッシュカードなんて持ち歩いていないし、このままパスケースが見付からなければ家に帰れない。
学校中必死に探しても見付からなくて、最後の望みで落とし物で届いていないか事務室に向った。
「黒田実々!!」
向かう廊下で、後ろから呼び止められた。
振り向くと、この学校の制服を着た男の子が私に向かって走ってきていた。