天使の涙(仮)


「で?何を話したいわけ?」

買った物を冷蔵庫に入れながらそっけなく聞く。

「いや、昨日の言ったことマジなのかなと思って…」

彼は台所の入口に突っ立ってそう言った。

この男は昨日、私が切り捨てた男。私より1つ年上の貴弘だ。名字なんかも聞いた気もするが、覚えていない。
貴弘とは体の関係を持って1年くらい。
たまたま行きつけの居酒屋で話しかけられて、酔った勢いでそうなった。
貴弘には彼女がいて、私はただ単に浮気相手。
私の他にも何人かそいいう女がいるっぽかった。
お互い会いたいときに会って、セックスをする。
見たからにチャラチャラした遊び人。
そういう相手の方が私としては都合が良かった。
変な執着心を持たれることなくいられる。

だけど、違った。

最初は月に3回くらいだったのが、2ヶ月前くらいから週に2回と会う回数が増えた。
最中に“好きだよ”とかくだらない言葉まで囁くようにもなった。
更に、束縛めいたことまでもするようになったのだ。

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